2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ

« インマヌエルが生まれた | トップページ | 人間を返せ »

2013年5月 3日 (金)

起きて 行け

 長い旅でした。仕事を中断し日常の全ての営みが断たれ、もちろんその旅に関わる高い費用は自己負担。嬉しい旅ではありません。その時代その地方の「高貴な方」の命令で、国中の人々がそれぞれの都合などお構いなしに強制的に生まれ故郷に帰らねばならない、命じられた道のりでした。身重の妻と共に埃っぽい道を経巡り、やっとあてがわれた家畜小屋での出産。衛生的に整えられた、恵まれた環境ではありません。
 突然のお告げで身重であることを知らされたマリア、そしてそのことを打ち明けられた連れ合いのヨセフも、このクリスマスの出来事をめぐっては沢山のことを思い巡らせました。迷いがあり、疑いがあった…。不安と怯えに襲われたこの夫婦に起こった突然の出来事、それがクリスマスです。周りの環境も、自分のこころの中もこの夫婦の予定や準備などはお構いなし。それがクリスマスなのです。
 なにもかもがヨセフには慌ただしいことでした。人々が蔑む職業であった羊飼いたちが生まれて間もない赤ん坊を拝みに来ました。ヨセフには見ず知らずの人々です。また、別の言い伝えでは遠い東の国の占星術の学者たちも同じように赤ん坊を拝みに来るのです。見ず知らずどころか、言葉さえ通じない外国人…。当時の人々の常識では地獄の火の焚き付けにされる異教の人々、外国人たちもこの生まれたばかりの赤ん坊を拝んでいる。慌ただしく忙しい、出産直後のことです。
 二人が味わった出産までの沢山の思いは、この時に生まれたその赤ん坊の顔を見た瞬間に全て吹き飛んだに違いありません。妻を気遣うヨセフ、痛みを乗り越えて出産という大役を果たしたマリアにとって、イエス誕生は、旅の疲れも為政者の勝手な命令も不衛生な家畜小屋も、もうどうでも良い。とにかく赤ん坊が生まれた。これまでの辛さや痛みを遙かに凌ぐ喜びと安堵を味わっただろうと想像しています。
 いまこの二人に必要なのはしばしの安息です。そして十分な安息のただ中で思い描く、この生まれたばかりの赤ん坊の未来への想像力です。この子にはどんな人生が待っているのだろう、そしてこの子の人生に両親である私たちはどのように重なりゆくのだろう。貧しくとも笑顔の溢れる家庭にしたい…。ささやかな願いや夢を十分に交わし合うことのできる時間がこの二人にはとても大切に思えたでしょう。しかし聖書は、そんな二人のささやかな願いさえも打ち砕く現実を伝えるのです。
 「起きて、行け」。問答無用の言葉です。ホッとする間もなく直ちに支度して「行け」と、神は天使を通して命じます。ヨセフにはヨセフの言い分があったでしょう。もう少し待ってください、いくらなんでも「たった今、直ちに」とは酷(ひど)すぎます。もう少し休ませてください。もう少し気持ちが安定すれば、もう少し自分にそれを聴くだけの余力があったなら…。けれども人間の都合などお構いなしの「神の側からの一方的な言葉」によってさらにヨセフとマリアの旅は続くのです。
 私たちの人生の旅路でも、ここに描かれているヨセフやマリアの姿にこの自分が重なり合うあのこと、このことが思い出されます。もう少し待ってください、今はまだその時ではありません…。そんな言葉を繰り返しながらこれまでそれぞれの旅を続けてきました。沢山の不満を抱きました。なぜあの人にではなく、この私になのですか、なぜ今なのですか。なぜ…? 
 人間の側の都合や計画をまるで無視するかのように神の計画は進みます。状況が整い安心して課題に取り組めることなど皆無で、不十分だったりまだその時ではないと思っている時にこそ大変な課題に晒されるのです。そんな私に聖書は語ります。
 「恐れることはない、私はあなたと共にいる」。ヨセフがそうであったように、聖書の伝えるこの言葉に賭けてみる。どんなに辛く厳しい状況の中にあってもこの言葉を生きようと決意したいのです。その約束を信じると同時に、悲しみに満ちたこの時代に共に生かされている他者を信じていたいのです。さあ、起きて、行こう。私たちに託されている希望を携えて生きよう。クリスマス、おめでとう。

« インマヌエルが生まれた | トップページ | 人間を返せ »

季刊紙いぶきメッセージ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 起きて 行け:

« インマヌエルが生まれた | トップページ | 人間を返せ »